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執筆者の写真三田市保護司会

「依存症の人の支援にあたって」  神戸保護観察所保護観察官 羽渕 友香

更新日:2020年11月12日

 



 私は保護観察所で薬物依存のプログラムを担当しています。2週間に1回,5~6人ほどの方が集まり,薬物について話し合います。専用のテキストに沿って実施するのですが,その中で,私が違和感を持った箇所がありました。それは「あなたにとって薬物をするメリットとデメリットは何か?」というテーマです。デメリットを考えるのは分かるのですが,「薬物のメリットを尋ねて何の意味があるのか。」と思っていました。その根底には薬物で得られるものはないし,悪い面を強調するべきだというような思いがあったのかもしれません。

 私は何かで失敗したり落ち込んだりした日には,自分を慰めたいような思いで,コンビニに寄って大好物の甘いスイーツと激辛のカップラーメンを買って帰ります。食べているときは満足するのですが,結局現状は変わらないので,失敗を引きずってしまうことが多いです。しかも暴飲暴食したせいでしんどくなり,食べたことを後悔するのですが,また落ち込むようなことがあると「食べても何も変わらないのに」と思いながら買ってしまいます。

 私は依存症の人の話を聞いていて,全く違う世界の人とは思えません。私の問題と比べると程度の差はありますが,薬物を使う人たちも,悩みや思い通りにいかない苦しい現実から逃れたい,自分を癒したいという気持ちから,薬物に何かを求めていた人たちなのかもしれません。あとで後悔する点も,現状が何も変わらないと分かっていながら手を出してしまう点も,似ていると思います。

 プログラムの中で薬物を使うメリットについて考えることの意味は,その人が欲しているものを見つめて,それを薬物以外の合法的な手段で得る方法を考えていくことが根本的な解決につながるからだと思います。そもそもなぜ苦しい状態になっているのかなどの,前提も見つめる必要があるかもしれません。薬物に限らず,依存症の人のことは分からないと思わずに,自分に照らし合わせたり,友人の話を聞くのと同じように話をしたりしていきたいと思っています。

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