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執筆者の写真三田市保護司会

歌とみちづれの人生 梶田美恵子

 あの人は今どうしているだろうか。

 

「新型コロナウイルス」感染症拡大の恐怖に世界中がおびえ、自粛の日々が長く続いた。先の見えない不安、孤独感が増長しないか、そんな想像が私の頭をよぎる。 

数年前のこと、演芸で友愛訪問に出向いたある施設で、車イスが並ぶその後に、家族に付き添われて寝台車で眠っていた男性。みんなで歌いましょうとナツメロの曲が流れた。会場のみなさんが歌い初めたその時、今まで眠っていた男性がかすかに口を動かした。そっとマイクを向けると、確かに男性の声がはっきりと聞こえる。曲目は「かえり船」であったかと思う。戦中、戦後を生きてきたその時その思い出がよみがえったのであろう、家族もびっくり、「ここに来て歌ったのは初めてです。」とさけぶ様に言った。歌の持つ力の大きさに感動を覚えた。その日以来私の歌に寄せる思いがガラッと変わった。

 ふと思う。歌とは何と不思議なものだろう。うれしいにつけ、悲しいにつけ、歌は人の心をなぐさめ励ましてくれる。  

私の人生の中でも一番つらく悲しい思い出がある。平成24年の秋まつり、だんじりの暴走事故で長女を失った。同じ場所に立っていながら、長女は即死、私だけが生き残った。どんなに悔やんでも悔やみきれないあの事故前の、あれや、これやの出来事が私の胸を締め付ける。暗く長いトンネルの中をひたすらさまよいつづける思いの日々が続いた。「これがうつ病か?」とも思った。気を取り直し歌をうたってみた。涙が流れてとまらない。誰れにも出会わない軽トラックの中でひたすら歌をうたったものだ。

現在私は「さわらび座」の歌手をつとめている。歌詞にはテーマがあり、物語がある。その歌詞をいかに大事に歌うかによって、聞く人の心に伝わるものがある。そんな歌手になりたいと思っている。 

一日も早く、「コロナ」が終息し、笑顔であの人達に会いたい。どうか元気でいて欲しい。そう心より願っています。

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